子どもたちの読書の時間: 19 分
金持ちの妻が病気になり、最期が近づいていると感じたので、たった一人の娘をベッドのそばに呼んで、「愛するわが子よ、良い子で神様を信じているんですよ。そうすれば神様がいつもお前を守ってくれます。私は天国からお前を見下ろしてお前の近くにいますからね。」と言いました。それで目を閉じ、亡くなりました。毎日娘は母親の墓に出かけては泣きましたが、信心深く善良なままでした。冬が来て雪が墓の上に白い覆いを広げ、春の太陽がまたその雪を溶かす頃には、男は別の妻をもらいました。
その女は家へ二人の娘を一緒に連れてきました。、娘たちは顔は美しくきれいでしたが、心は汚く真っ黒でした。それから可哀そうな継子の辛い時期が始まりました。「間抜けが私たちと一緒に居間に座っていていいの?パンを食べたい人は稼がなくちゃね。台所女中は外よ。」と二人は言いました。二人は娘からきれいな服をとりあげ、娘に古い灰色の上っ張りを着せ、木の靴をはかせました。「高慢な王女様をみてごらん。なんておめかししているの。」と叫んで笑い、娘を台所に連れて行きました。そこで娘は朝から晩まで、辛い仕事をしなければなりませんでした。日の出前に起き、水を汲み、火をおこし、料理洗濯をしました。
これに加えて二人は考えられるかぎりの意地悪をしました。娘を嘲り、灰の中にエンドウ豆やレンズ豆をまいたので、娘がもう一度座って豆を拾い上げねばなりませんでした。疲れるまで働いた夜には、寝るベッドがなくて、灰があるかまどのそばでねむらなければなりませんでした。そのため娘はいつもほこりがついて汚く見えたので、二人は娘を灰かぶりと呼びました。たまたまあるとき父親が市にいくところで、二人の継娘たちにお土産に何がほしいかと尋ねました。「美しいドレスよ」と一人が言いました。「真珠と宝石をお願い。」と2番目が言いました。「それで、お前は何がいい?シンデレラ。」と父親は言いました。
「お父さん、私には帰り道でお父さんの帽子にぶつかる最初の枝を折り取ってください。」それで父親は二人の継娘には美しいドレスと真珠と宝石を買い、帰り道で緑のやぶを馬で通っていたので、はしばみの枝があたり帽子を落としました。それで父親はその枝を折って持っていきました。家に着くと継娘に望んだ品を渡し、シンデレラにははしばみの木からとった枝を渡しました。シンデレラは父親にお礼を言い、母親の墓に行き、そこに枝を植え、とても泣いたので、涙がその枝に落ち、濡らしました。
そしてその枝は大きくなり、立派な木になりました。日に3度シンデレラはその下に行って座り、泣いて、お祈りしました。そして、一羽の小さい白い鳥がいつもその木にきて、シンデレラが望みを言うと、その鳥が娘の望んだものを落としてよこしました。ところで、王様が祝祭の命令を出し、その祝祭は3日続くものとし、王様の息子が花嫁を選ぶため国の美しい若い娘は全員招待されるというものでした。
二人の継娘は自分たちもその祝祭に出ることになると聞いたとき、喜んで、シンデレラを呼び、「わたしたちの髪をといて、靴を磨いて、ベルトを締めてね。私たちは王様の宮殿の結婚式にいくのだから。」と言いました。シンデレラは言うことに従いましたが、泣きました。というのは自分もまた一緒に踊りに行きたかったからです。そして継母にそうするのを許してくれるようお願いしました。「お前はほこりと泥まみれじゃないの。それで舞踏会に行くですって?」と継母は言いました。「お前には服も靴もないのに、踊る、ですって?」
しかし、シンデレラが頼み続けたので、継母はとうとう、「レンズ豆を一皿灰の中に空けておいたから、もしお前が2時間でそれを拾ったら、一緒に行かせてあげるよ。」と言いました。乙女は裏口から庭に出て、「お友達のハトさん、キジバトさん、空の下の小鳥さんたちみんな、良い豆をかめに、悪い豆をみなさんに、拾うのを手伝ってちょうだい。

」と呼びました。すると2羽の白い鳩が台所の窓から入ってきました。そのあとで、キジバトが、最後に空の下の小鳥たちがみんな羽音を立てて集まってきて、灰の間に降りました。鳩たちが頭をひょこひょこさせ、コッコッコッコッとつつき始め、残りの鳥たちもコッコッコッコッと始め、皿に全部の良い豆を集めました。
一時間もたたないうちに小鳥たちは終わってみんなまた飛び去りました。それで娘は皿を継母のところへ持って行き、嬉しく思い、今度こそ舞踏会へ一緒に行かせてもらえると信じていました。しかし、継母は「だめよ、シンデレラ、お前には服がないじゃないの、それに踊れないわよ。ただ笑われるだけだよ。」と言いました。これを聞いてシンデレラが泣くと、継母は「もし一時間で灰から二皿のレンズ豆を拾ったら一緒に行かせてあげるよ。」と言いました。
それで継母は心の中で、今度はきっとやれないわよ、と思っていました。継母が灰の中に二皿のレンズ豆を空けたとき、乙女は裏口から庭に出て、「お友達のハトさん、キジバトさん、空の下の小鳥さんたちみんな、良い豆をかめに、悪い豆をみなさんに、拾うのを手伝ってちょうだい。

」と呼びました。すると2羽の白い鳩が台所の窓から入ってきました。そのあとで、キジバトが、最後に空の下の小鳥たちがみんな羽音を立てて集まってきて、灰の間に降りました。
鳩たちが頭をひょこひょこさせ、コッコッコッコッとつつき、残りの鳥たちもコッコッコッコッと始め、皿に全部の良い豆を集めました。30分もたたないうちに小鳥たちは終わってみんなまた飛び去りました。それで娘は嬉しく思い、今度こそ結婚式へ一緒に行かせてもらえると信じていました。しかし、継母は、「こんなこといくらしてもだめよ。」と言いました。

「お前は一緒にいけないよ。だってお前には服がないし、踊れないじゃないか。私たちはお前が恥ずかしいよ。」こう言ってシンデレラに背をむけると、二人の高慢な娘と一緒に急いで行ってしまいました。もう誰も家にいないので、シンデレラははしばみの木の下にある母親の墓に行き、叫びました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」すると小鳥が娘に金銀のドレスと絹と銀で刺しゅうされた上靴を落としてよこしました。
娘は大急ぎでドレスを着て、結婚式に行きました。ところが二人の姉たちや継母は娘を分からず外国の王女様にちがいないと思っていました。というのは娘は金のドレスを着てとても美しかったからです。三人はシンデレラのことは一度として思い起こさず、家で汚れたものの中にいて、灰からレンズ豆を拾っていると信じていました。王子が娘に近づき、手をとって一緒に踊りました。他の乙女とは踊ろうとしないで娘の手を放さず、他のだれかが娘に申し込もうと来ると、王子は「こちらはぼくの相手です。」と言いました。娘は夕方まで踊り、それから家に帰ろうと思いました。
しかし、王様の息子は、「あなたと一緒に行き、お伴いたしましょう。」と言いました。というのは王子はこの美しい娘がだれの娘か知りたかったからです。しかし、娘は王子から逃げ、鳩小屋に跳び込みました。王様の息子が待っていると、娘の父が来たので、見知らぬ乙女が鳩小屋に跳び込んだと話しました。父親は、それはシンデレラかな?と思いました。それで、鳩小屋をこなごなに壊すためにみんなは父親に斧とつるはしをもってこなければなりませんでしたが、誰も中にいませんでした。

みんなが帰って来たときシンデレラは灰の中で汚い服を着ていて、薄暗いランプが暖炉の上で燃えていました。というのはシンデレラは鳩小屋の裏から急いで跳び下り、はしばみの若木まで走り、そこで美しい服を脱ぎ、墓の上に置いて、鳥たちがまた服を持っていき、それから灰色の上っ張りを着て台所の灰の中に座っていたからです。次の日、舞踏会がまた新しく始まり、両親と姉たちはまた出かけてしまうと、シンデレラははしばみの木に行き、言いました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」
すると小鳥は前の日よりさらに美しいドレスを娘に落としてよこしました。そしてシンデレラがこのドレスを着て、結婚式に現れると、みんながその美しさに驚きました。王様の息子は娘が来るまで待っていて、すぐに娘の手をとり、娘とだけ踊りました。他の人たちが娘に申し込もうと来ると、王子は「こちらはぼくの相手です。」と言いました。夕方になると、娘は家に帰ろうと思いました。それで王様の息子は娘のあとをつけてどの家へ行ったか確かめようとしました。しかし、娘は王子から跳んで逃げ、家の後ろの庭に入りました。
庭の中にすばらしい梨の実がついている美しい高い木が立っていました。娘はりすのようにすばしこく枝の間によじ登ったので、王様の息子は娘がどこに消えたのかわかりませんでした。

王子が待っていると、娘の父親が来たので、「あの見知らぬ乙女が私から逃げてしまいました。梨の木に登ったと思います。」と言いました。父親は、シンデレラかな?と思い、斧を持ってこさせて、木を切り倒しましたが、誰も木の上にいませんでした。
みんなが台所に入ってくると、シンデレラはいつものように灰の中にいました。というのは娘は木の反対側に跳び下り、はしばみの若木の小鳥に美しいドレスを持って行き、灰色の上っ張りを着たのです。三日目に両親と姉たちはまた出かけてしまうと、シンデレラははしばみの木に行き、言いました。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」そして今度小鳥は、娘がいままで着たどのドレスよりもすばらしく豪華なドレスを落としてよこしました。そして上靴は金でした。

そのドレスで舞踏会に行くと、驚きのあまり誰もどう言っていいかわかりませんでした。王様の息子は娘とだけ踊り、誰かが娘をダンスにさそうと、「こちらは私の相手です。」と言いました。
夕方になると、シンデレラは帰ろうとしました。王様の息子は娘と一緒に行きたがりましたが、娘は王子から素早く逃げたので、王子は追いかけられませんでした。ところが王様の息子は、計略を練っていて、階段中にピッチを塗らせておいたのです。それで、娘が駆け下りると左の上靴がくっついたままになりました。王様の息子がそれを拾い上げてみると、それは小さくきゃしゃですっかり金でした。次の朝、王子は父親のところにそれを持って行き、「この金の上靴に合う足の人以外の誰も妻にしません。」と言いました。すると、二人の姉たちは喜びました。と言うのは二人は可愛い足をしていたからです。一番上の娘は靴を持って部屋へ入り、履いてみようとし、母親はそばに立って見ていました。
しかし、娘は親指を靴に入れられませんでした。靴は娘には小さすぎました。それで母親は娘に小刀を渡し、「親指を切りとりなさい。お后になったらもう歩かなくて済むだろうから。」と言いました。娘は親指を切り落とし、足をむりやり靴に入れ、痛みをこらえて王様の息子のところに出ていきました。それで王子は娘を花嫁として馬に乗せ、一緒に走っていきました。ところが、二人は墓のところを通りすぎなければいけませんでした。そこに、はしばみの木の上に、二羽の鳩がとまっていて、叫びました。

「振り向いて覗いてごらん、振り向いて覗いてごらん、靴の中に血があるよ。その娘には靴が小さすぎる、本当の花嫁はあなたを待っているよ。」
それで王子は娘の足を見ると血が滴り落ちているのが見えました。王子は馬を回して、偽の花嫁をまた家に連れて行き、「この人は当人じゃありません。もう一人の妹に靴を履かせてください。」と言いました。それで妹が部屋に入り靴に無事に親指を入れましたが、かかとが大きすぎました。それで母親が小刀を渡し、「かかとを少し切りなさい。お后になったらもう歩かなくて済むんだから。」と言いました。
娘はかかとを少し切り落とし、足をむりやり靴に入れ、痛みをこらえて王様の息子のところに出ていきました。それで王子は娘を花嫁として馬に乗せ、一緒に走っていきました。しかしはしばみの木のそばを通ると、木の上に、二羽の鳩がとまっていて、叫びました。「振り向いて覗いてごらん、振り向いて覗いてごらん、靴の中に血があるよ。その娘には靴が小さすぎる、本当の花嫁はあなたを待っているよ。」王子が娘の足を見下ろすと、血が靴から流れていて、白い靴下が真っ赤に染まっているのが見えました。王子は馬を回して、偽の花嫁をまた家に連れて行き、「この人も当人じゃありません。

もう他に娘はいないのですか?」と言いました。
「はい、おりませんです。まだ亡くなった妻が残していった少し風変わりな台所女中はいますが、花嫁とはとんでもございません。」と父親は言いました。王様の息子は、その娘を連れてくるようにと言いましたが、母親が、「とんでもございません。あまりにも汚くてお目にかかれませんよ。」と答えました。しかし、王子があくまでも言い張るので、シンデレラを呼ばなければなりませんでした。

娘はさきに両手と顔を洗ってきれいにし、王様の息子の前に行ってお辞儀をしました。王子は娘に金の靴を渡しました。それで娘は足載せ台に座り、重い木の靴から足を出して上靴に入れました。それはぴったり合いました。
そして娘が立ちあがって、王様の息子がその顔を見ると、自分と踊った美しい乙女だとわかり、「この人が本当の花嫁だ」と叫びました。継母と二人の姉たちは恐ろしくなり、怒りで青ざめました。しかし王子はシンデレラを馬に乗せ、一緒に乗って去りました。
二人がはしばみの木のそばを通ると、二羽の白い鳩が叫びました。「振り向いて覗いてごらん。振り向いて覗いてごらん。靴に血がついていないよ。靴は娘には小さすぎない。本当の花嫁があなたと一緒だよ。」そう叫ぶと二羽は降りてきて、シンデレラの肩に、一羽が右に、もう一羽が左に、とまり、そこに座ったままになりました。王様の息子の結婚式が行われることになると、二人の不実な姉たちがやってきて、シンデレラのご機嫌をとり、幸運を分けてもらおうとしました。
結婚する二人が教会に行ったとき、姉は右側に妹は左側にいました。そして鳩たちがそれぞれから片目をつついて出し、戻りは姉が左で妹が右になったので、鳩たちはそれぞれからもう一つの目をつついて出しました。こうして意地悪と不誠実のために、二人は罰せられて生涯目が見えないままでした。

背景情報
解釈
言語
「シンデレラ」は、グリム兄弟による有名なメルヘンのひとつで、労苦や試練を耐え抜いた主人公が最終的に報われるという物語です。この物語は、多くの文化で語り継がれており、異なるバージョンやアレンジが存在しています。しかし、共通しているテーマとしては、善良さ、忍耐、そして逆境を乗り越える力が挙げられます。
物語の主人公であるシンデレラは、亡くなった母親の教えを忠実に守り、信仰心を持ちながら日々を過ごします。継母と義理の姉たちからの虐待にも耐えながら、自らの優しさや強さを失いません。シンデレラは、母親の墓に植えたはしばみの木の下で、いつも祈りを捧げ、その善行は最終的に報われることになります。
物語の重大な転機は、王子が花嫁を選ぶために開いた舞踏会です。シンデレラは、はしばみの木に宿った魔法によって美しい衣装を手に入れ、舞踏会に出席します。王子は美しいシンデレラに心を惹かれ、彼女と一緒に踊り続けます。物語は、王子がシンデレラの純粋さを見抜き、彼女を花嫁に選ぶことでハッピーエンドを迎えます。
この物語には、善行は報われるという道徳的な教訓が込められており、また、困難に立ち向かい続けることの重要性も強調されています。シンデレラの物語は、世代を超えて語られ、多くの人々に愛され続けています。
この物語は、「シンデレラ」として広く知られているグリム兄弟の童話です。物語の中心は、信心深く、親孝行な少女シンデレラが継母と義理の姉妹たちから辛い扱いを受けながらも、最終的に王子と結ばれるというおとぎ話です。
この物語にはさまざまな解釈や教訓が存在します。以下にいくつかのポイントを挙げてみます:
善行と信念の重要性: シンデレラはどんなに酷い仕打ちを受けても、母の言葉を守り、善良さと信心深さを失いません。この姿勢が彼女の運命を変える重要な要素として描かれています。
因果応報: 継母と義理の姉妹たちはシンデレラをいじめますが、最終的には二人の姉妹が失明するという罰を受けます。このことから、他者に対する行動がいつか自分に返ってくるという因果の法則が示されています。
変身と自己実現: シンデレラが美しい衣装をまとい、王子とダンスを踊る場面は、彼女の隠された可能性と本来の自己が開花することを象徴しています。自己実現と変身の物語としても解釈できます。
社会的地位と幸せの関係: 物語では、社会的な地位が幸せをもたらすのではなく、個人の内面的な美しさや正直さが最終的に報われるというテーマが繰り返し描かれています。
この童話は長い間多くの文化において様々な形で受け継がれてきましたが、それぞれの物語が社会や時代背景に応じた異なる教訓や価値観を示しています。
グリム兄弟による「シンデレラ」の物語は、数多くの文化圏に存在するシンデレラ物語の一つです。このバージョンでは、言語学的および文化的要素がいくつか際立っています。
伝統と信仰: 物語の冒頭では、シンデレラの母親が神への信仰を強調しています。これは、当時の社会での宗教の重要性を反映しています。また、シンデレラが母の墓を訪れ、祈りを捧げる場面も、死者への敬意や霊的な繋がりを示しています。
自然と超自然: シンデレラの物語には、人間と自然、超自然の力との関係が描かれています。シンデレラが墓に植えたはしばみの木が成長し、鳥たちが助けてくれる場面は、自然の力との協力を象徴しています。また、動物たちがシンデレラを助けるのも、自然と人間の調和を示しています。
階級と美の象徴: シンデレラが美しい衣装を身にまとい、王子に認められることで幸運を手に入れる展開は、外見や身分の重要性を描いています。彼女の変身は、一時的には階級を超えるものであり、物語の中心的なテーマの一つです。
報復と道徳: 物語の結末で、継姉たちが目を失うという罰は、彼女たちの意地悪と不誠実に対する報復として描かれています。これは、善悪に対する道徳的な教訓を伝える目的があります。
言語の特徴: グリム兄弟の文章は、シンプルかつ明瞭で、直接話法を多用しています。これにより、物語は子供にも理解しやすくなっており、口承文学としての特性を持っています。
この「シンデレラ」は、善行や信仰が報われるという普遍的なテーマを持ちつつも、ヨーロッパの文化や信仰が色濃く映し出されています。