子どもたちの読書の時間: 4 分
第一話
昔、小さな子供がいて、母親は毎日午後に小鉢にパン入りミルクをあげていました。子供はその小鉢をもって中庭にいき座りました。ところが食べ始めると、一匹の蛇が壁の割れ目から這い出て、皿に小さな頭を突っ込み、子供と一緒に食べました。子供はこれを喜んで、そこに小皿を置いて座って蛇がすぐにやって来ないと、叫びました。
「蛇さん、蛇さん、早くおいで
こっちへおいで、おチビちゃん
パンをあげるよ
ミルクを飲んで元気になあれ!」
すると蛇が大急ぎでやってきて、おいしそうに食べました。さらに、蛇はお礼の気持ちを示しました。というのは、子供に隠された宝物から、光る石、真珠、金のおもちゃなど、きれいなものをいろいろもってきたからです。ところが蛇はミルクだけ飲んで、パンは残しました。それである日、子供は小さなスプーンをとって、それで蛇の頭をやさしくたたきながら、「パンも食べるんだよ、おチビちゃん。」と言いました。台所にいた母親に、子供が誰かと話しているのが聞こえ、子供がスプーンで蛇をたたいているのを見ると、まきをもって駆けていき、仲よしのおチビちゃんを殺してしまいました。
その時から、子供が変になり始めました。蛇が一緒に食べていた間は、子供は大きく丈夫に育っていましたが、今はかわいいバラ色のほおがなくなり、やせおとろえていきました。まもなく弔いの鳥が夜に鳴きだし、こまどりが葬式の花輪用の小さな枝や葉を集めだしました。それからまもなく、子供はひつぎ台の上に横たわりました。
第二話
みなし子の子供が町の塀に座って糸を紡いでいました。そのとき、蛇が塀の下の方の穴から出てくるのが見えました。子供はこの蛇のそばに青い絹のハンカチをサッと広げました。蛇というのはそういう布をとても好み、その上にしか這ってこないのです。蛇はそれを見ると引き返し、また戻ってきて、小さな金の冠を持ってくるとハンカチの上に置き、また帰っていきました。女の子がその冠をとってみると、それはキラキラ光り、金の細いより糸でできたものでした。まもなく蛇は2回目に戻ってきました。しかし、もう冠がないのを見ると、塀を這い上って、悲しくてもう力がなくなるまで小さな頭を塀に打ちつけ、とうとうそこで死んでしまいました。もし女の子が冠をあったところに置いておきさえすれば、きっと蛇は穴からもっと宝をもってきたでしょう。
第三話
蛇が「フーフー」と鳴きます。子供が「出ておいで」と言います。蛇は出てきます。すると子供は妹のことを尋ねます。「赤靴下ちゃんを見なかった?」蛇は「いいえ」と言います。「私も見なかったわ。」「じゃあ、僕は君と同じだね。フーフー。」

背景情報
解釈
言語
『蛇の話』というタイトルのこの物語は、グリム兄弟によるメルヘンの一部で、互いに短いエピソードで構成されています。各話には蛇が登場し、子供や人間との特有の交流を描いています。
第一話では、幼い子供が蛇と不思議な友情を持ち、日々パン入りミルクを分け合っています。蛇からは宝物が贈られるなど、心温まる交流が描かれますが、誤解から悲劇的な結末を迎えるストーリーです。この話は、人間と動物との間に築かれる信頼と、それが誤解によって壊される儚さを示しています。
第二話では、孤児の少女と蛇が登場します。少女が蛇の好んでいる青い絹のハンカチを広げることで、蛇から金の冠を受け取ります。しかし、少女の欲によって蛇は冠を取り戻せず、絶望の末に命を落とします。この話では、欲望と信頼のバランスがテーマとなっています。
第三話は短く、その内容はほのぼのとしたやり取りを描いています。子供が蛇に妹の情報を聞くが、結局双方ともに見つけられないといった、ほのぼのとした無邪気な会話が特徴です。特に教訓的要素は薄く、日常的な交流の一部として描かれている印象です。
これらの物語は、子供と蛇との関係を通じて信頼、誤解、そして欲望についてのメッセージを伝えており、グリム兄弟の他の作品と同様に、人間の本質や社会の教訓を寓話的に表現した作品群です。
この物語は「蛇の話」というグリム兄弟の収録されたおとぎ話です。この話には3つの異なるエピソードが含まれており、それぞれ異なるテーマや教訓を持っています。
第一話: 物語は、子供が毎日蛇と一緒に食事を分かち合う心温まるシーンから始まります。子供と蛇の関係は友好的で互いに信頼し合っていましたが、母親の誤解と過剰反応によって悲劇が起こります。母親が蛇を殺してしまったことで、子供の健康が悪化していくという、自然と調和していることの重要性や、人間と自然との繊細な関係を表現しています。
第二話: これは、人間の欲深さとその結果についての話です。孤児の少女が蛇から金の冠を受け取りますが、その冠を返さなかったことで、蛇を死なせてしまいます。この物語の教訓は、貪欲さや即物的な利益の追求が、結果として大切なものを失う原因となることを示唆しています。
第三話: このエピソードは短いもので、子供が蛇に妹について尋ねる場面が描かれています。特定の深い教訓やテーマは明示されていませんが、コミュニケーションや誤解についての皮肉を介したミニマルなエピソードかもしれません。
全体を通して、物語は誤解、欲望、自然との関係を通じて、内在する教訓を伝えています。グリム兄弟の他のおとぎ話同様、人間と自然、持っているものを大切にすることの重要性など、様々なテーマが巧みに織り込まれています。
このテキストは、グリム兄弟のメルヘン「蛇の話」に関するエピソードを示しています。物語は3つの短い話から構成されており、それぞれが蛇と子供との関わりについて描かれています。以下に、それぞれの話の要約と分析を示します。
第一話
最初の話では、毎日ミルクとパンを食べる子供と蛇の友情を描いています。蛇は子供に宝物を持ってくることで感謝を示しますが、母親がそれを誤解し、蛇を殺してしまいます。蛇が死んでから子供の健康が衰え、最終的には亡くなってしまいます。この話は、無知や誤解がもたらす悲劇をテーマとしており、蛇と子供の友情が命という形で断たれる様子が描かれています。
第二話
二番目の話では、蛇が青い絹のハンカチの上に小さな金の冠を置くエピソードが語られます。女の子が冠を持ち去ったため、蛇は戻ってこなくなり、悲しみのあまり死んでしまいます。この話は欲望や物欲が友情や信頼を損なうことを示唆しています。女の子が冠をそのままにしておけば、蛇はもっと宝物を持ってきたかもしれません。
第三話
最後の話は極めて短く、蛇と子供が簡単な会話を交わすだけです。この会話は抽象的で、赤靴下ちゃんという存在を探すやりとりを通して、蛇と子供の繋がりや、何かを求める心を象徴しているのかもしれません。この物語のテーマは、何かを探しているが見つからない状況に重きを置いている可能性があります。
この物語全体を通して、蛇は重要な存在として描かれており、ドイツのメルヘンによく見られる動物としてのシンボルが生きています。また、子供や人間の無知や誤解によって引き起こされる問題点や、欲望が引き起こす悲劇的な結末が寓意的に描かれています。