子どもたちの読書の時間: 12 分
昔、神様が子供を与えないお后がいました。毎朝、お后は庭に行き、息子か娘を授けてくださるようにと天国の神様にお祈りしました。すると、天国から天使がやってきて、「あんしんしてください。願掛けの力をもった息子が授かりますよ。そのためその子がこの世で望んだことはなんでもかなうでしょう。」と言いました。それでお后は王様のところに行き、うれしい便りを知らせ、時が来ると、息子を産みました。それで王様は喜びでいっぱいでした。
毎朝、お后は動物が飼われている庭に子供と一緒に行き、そこのきれいな流れで水浴しました。あるとき子供が少し大きくなったとき、お后は子供を腕に抱いたまま、眠ってしまいました。すると、としとったコックがやってきて、子供が願掛けの力を持っていると知っていたので、さらっていきました。そしてニワトリをとって切り刻むとその血をお后のエプロンとドレスに落としました。それから、子供を秘密の場所に運んで、乳母に乳を飲ませるようにさせ、王様のところに走っていくと、お后は動物に子供をとられてしまったとお后を非難しました。王様はエプロンの血を見るとこれを信じ、とても怒って、中からは太陽も月も見えないような高い塔を作らせ、妻をそこにいれさせ、閉じ込めてしまいました。お后はここで7年間食べ物も飲み物も無く暮らすか飢え死にすることになりました。>しかし、神様は2人の天使を天から白い鳩の姿で送り、日に2回飛んできて、7年が過ぎるまで食べ物を運びました。
ところが、コックは、もし子供が願掛けの力をもっていて、おれがここにいるなら、とても簡単に自分を面倒に巻き込むかもしれない、と考えました。それで宮殿を去り、男の子のところに行き、もう口を言えるくらい大きくなっていたので、「自分のために庭やいろいろ付いた美しい宮殿を願え」と言いました。男の子の口から言葉が出た途端、願ったあらゆるものがそこにありました。しばらくしてコックは「お前がそんなに一人でいるのは良くないよ。友達としてかわいい女の子を願え。」と言いました。それで王様の息子はそれを願い、すぐに女の子が目の前に立っていて、どんな絵描きが描くよりもきれいでした。
二人は一緒に遊び、心からお互いを好きでした。年とったコックは貴族のように猟にでかけました。しかし、王様の息子はいつか父親に会いたがるかもしれない、そして自分はかなり危険になるかもしれない、という思いが起こりました。それで出て行って、娘をわきに連れてきて、「今夜、男の子が眠ったら、ベッドに行き、ナイフを心臓に突き刺せ。そして心臓と舌をおれに持ってこい。もしやらなければお前の命はないぞ。」と言いました。 それからコックは行ってしまいました。次の日戻った時、娘はやっていなくて、「どうして誰も傷つけなかった罪のない男の子の血を流さなければいけないの?」と言いました。コックはもう一度「やらなければ、お前の命はないぞ。」と言いました。
コックが行ってしまうと、娘は小さな雌鹿を連れて来てもらい、殺すように命じて、心臓と舌をとり、さらにのせました。コックがやってくるのを見たとき、男の子に、「ベッドにねて、布団をかぶせていて」と言いました。それから悪党が入って来て、「男の子の心臓と舌はどこだ?」と言いました。娘は皿をのべましたが、王様の息子はキルトをはぎ取って、「この罪人め、なぜ僕を殺そうとした?今判決を言い渡す、お前は黒いプードルになり首に金の首輪をし、喉から炎がとび出てくるまで燃えている炭を食べるのだ」と言いました。これらの言葉を言うとすぐ、コックはプードルに変えられ、首に金の首輪をしていました。そして、他のコックたちは燃えている炭を持ってくるように命令され、その炭を犬は食べ、とうとう喉から炎が噴き出しました。
王様の息子はそこにもう少しそこにとどまりましたが、母親のことが思い起こされ、まだ生きているのかなと思いました。とうとう王子は娘に「私は自分の国に帰ります。一緒に来る気があるなら、君を養うよ。」と言いました。「ああ、道のりはとても長いし、私のことを知らないよその土地で私はどうしましょう。」と娘は答えました。娘はあまり気がすすまないようだし、二人はお互い別れられないので、王子は願をかけて娘を美しいなでしこに変え、身につけて持ちました。それから自分の国にでかけ、プードルはあとを追いかけさせました。
王子は母親が閉じ込められている塔に行き、とても高いので、てっぺんまで届く梯子を願掛けしました。それから上へ登って中を覗き、「愛するお母様、お后さま、まだ生きていらっしゃいますか、それとも亡くなってるんですか?」と叫びました。お后は「今食べたばかりでまだおなかがいっぱいよ。」と答えました。というのは、天使たちがそこにいるのだと思ったからです。「私はあなたの愛する息子です。けものがあなたの腕から引き裂いたと言われていますが、まだ生きてますよ。そしてすぐにあなたを自由にします。」と王子は言いました。
それからまた降りて、父親のところにいき、他人の猟師として取り次がせ、王様にお仕えできないかと尋ねました。王様は「いいだろう、お前が腕がたち、私に獲物を捕ってこれるなら、使ってやろう。だがどの地方でも国中で鹿は一度も住んだことはなかったぞ。」と言いました。それで猟師は王様の食卓で使えるだけたくさんの獲物をもってこようと約束しました。それで、王子は猟師たちを呼び集め、森へ一緒に出かけるよう命じました。そして王子は猟師たちと一緒に行き、猟師たちを大きな輪にさせ、自分がいる方を開けさせ、願をかけ始めました。
二百頭以上の鹿がすぐに輪の中へ走って来て、猟師たちは撃ち、鹿は全部六十台の荷車に積まれ、王様のもとへ運ばれました。そして何年も獲物が何もなかったあとで一度王子は王様の食卓を獲物で飾ることができました。
さあ王様はこれにとてもよろこび、次の日に宮廷のみんなが一緒に食べるようにと命じ、大宴会を開きました。みんなが集まると王様は猟師に「お前はとても賢いから、私の隣にすわるがよい」と言いました。王子は「王様、陛下は私にお許しを願います。私は貧しい猟師です。」と答えましたが、王様は承知しなくて「隣に座るがよい」となんども言うので、とうとう座りました。そこに座っている間に愛する母親のことを考えて願掛けをし、王様の偉い家来の一人がお后のことを話し始め、塔の中でお后はいかがかおすごしか、まだ生きていらっしゃるかそれとも亡くなられたかと尋ねますように、と心の中でいいました。
願掛けをするとすぐに長官が始めて、「陛下、私たちはここで楽しく暮らしていますが、塔にいるお后さまはいかがでしょうか?まだ生きていらっしゃるのですか?それともお亡くなりに?」と言いました。しかし王様は、「妃は愛する息子をけものに引き裂かせたのだ、妃の話は聞きたくない。」と答えました。それで、猟師は立ちあがって、「お父様、お妃さまはまだ生きています、そして私はお后の息子です。私はけものにではなくあの悪党の年寄りのコックにさらわれたのです。コックはお后が眠っている時腕から私をさらい、ニワトリの血をエプロンにつけておいたのです。」と言いました。 そこで王子は金の首輪をしている犬を連れて来て、「これがその悪党です。」と言って、燃えている炭をもってこさせ、みんなが見ている前でその炭を食べさせ、ついに炎がのどから噴き出ました。こうして猟師は王様に犬の本当の姿を見たいか尋ね、元のコックの姿に戻す願をかけました。それで、すぐにコックが白いエプロンをかけわきに包丁をさげて立っていました。王様をコックを見ると、とても怒って、一番深い地下牢へ入れろと命令しました。
それから猟師はさらに、「お父様、私をとてもやさしく育て、あとで私を殺さねばならなくなって、自分の命がかかっていたのにそうしなかった娘にあいませんか」と言いました。王様は「ああ、会いたいものだ」と答えました。息子は、「娘を美しい花の姿で見せましょう。」と言って、ポケットに手をいれ、なでしこを出し、王様のテーブルに置きました。それはとても美しく、王様がこれまでに見たこともないくらいきれいななでしこでした。それから息子は「さあ、本当の姿をお見せしましょう。」と言って、娘になるようにと願をかけました。すると、娘はどんな絵描きもこれ以上描けないように美しくそこに立っていました。
そして王様は二人の侍女と二人の家来を塔に送り、お后を王様のテーブルに連れてくるよう命じました。ところが、お后は連れてこられても何も食べず、「塔の中で私を養ってくださった恵み深い神様がもうすぐ私を自由にしてくださいます。」と言いました。お后はそれから三日生きたあと、安らかに亡くなり、埋められたとき、塔に食べ物を運んだ、天国の天使の、二羽の白い鳩が、あとについてきて、お墓の上にとまりました。
年とった王様はコックを4つに切り裂くように命じましたが、悲しみのため心が憔悴してまもなく王様は亡くなりました。息子はポケットに花にして連れてきた娘と結婚しました。二人がまだ生きているかどうかは神様がご存知です。